1999.05.15「古楽でモテモテになろう! Part3 - G線上のアリア -」

症懲りもなく、このネタで書き続けてます。 相変わらず、反応は全くありませんが、 「やめろ」という反応もないので、続けましょう(*1)

「バッハ」というと、皆さんご存知のバロック音楽筆頭の代表選手。 さらに、バッハと言えば有名どころの「G線上のアリア」。 今回はこの曲に焦点をあてて見ましょう。

これほど広く一般に知られた曲は、クラシック界でも他に例を見ません。 1998年前半に、ちょっとお洒落なFMラジオ番組では `Everything's gonna be alright'(Sweet Box)という ラップの曲(いわゆるR&Bですね)がひっきりなしにかかっていましたが、 このベースになっている曲がいわゆる「G線上のアリア」。 あの旋律にグラウンドビートを加えて、 ラップをノせるという面白い試みが受けたのではないかと思います。

最近は、お茶をすすりながら三白眼のヒゲ親父が 「…今は2階でいいんだけどね、でも、将来は3階にしようかと思うんだよね…」 とカメラに向かって話す某住宅会社の永久ループCMでも 使われています。このCMは実に妙な味があって、私は目が逸せません。

では、お待ちかね(?)の雑学タイムです。

「G線上のアリア」の名前ですが、 これは管弦楽組曲の第3番の3曲目のAir(アリア)を、 有名な20世紀のヴァイオリニスト(確かクライスラー)が ヴァイオリンのG線(一番低い弦)で演奏できるように、 ヴァイオリンとピアノのために編曲したことから由来しています。 ただ、現在ではほとんど名前しか使っていなくて、「G線上のアリア」と題して、 管弦楽組曲の3番のアリアを演奏することがほとんどのようです。 ですから、ヴァイオリンとピアノで演奏していないのは、 厳密に言うと「G線上のアリア」ではありませんね。 「管弦楽組曲第3番のアリア」が正式名称でしょう。

ヴァイオリンパート2 + ヴィオラパート1 + 通奏低音 という編成ですので、 ちょうどオーケストラの弦楽器部分だけで演奏できます。 とにかく、この曲の美しいこと。 歩みを刻むようなバスの旋律の上に構築される、 「」という言葉がぴったりのヴァイオリンとヴィオラパート。 ジャズで言う「テンションコード」と、その解決和音の連続で、 最初の和音からして…
…と曲に酔いしれている場合ではないですね。

私達は、モテモテにならなければならないのです。

でも、この曲でモテモテになるのはちょっと難しいです。 もう「ムード音楽」として使う手は、すでに 「無伴奏チェロ組曲」の回 で使っちゃいましたからね。そもそもこの企画自体無理があったりするんですが、 そこは目をつぶってイきましょう。

では、この曲がどんな機会に演奏されるかを考えてみましょう。 ちょっと前、巷ではα波なんて言葉が流行りました。 そんな時に、環境音楽とかのCDには、 この「G線上のアリア」は必ずと言って良い程入っていたモノです。 それを利用するのです。

応用例です。

「最近ちょっとバリ疲れててぇ」
「どうしたの?」
「なんかぁ、夜? 寝れないのぉ」
「何か悩み事でもあるのかい?」
「1週間前から付き合ってる彼がいるんだけどぉ、そいつがやらせろやらせろって超うるさくてぇ」
「なるほど」
「で、しょうがないからぁ、この前の夜、やらせてあげたのぉ」
「ふーん」
「そうしたら、怒り出してぇ」
「どうして?」
「初めてらしくてぇ、全然先に進めないのぉ」
「なるほど。それは君もストレスが溜るだろ」
「だから、隠しコマンドを教えてあげてぇ、ようやく進めるようになったんだけどぉ」
「隠しコマンド?」
「で、毎晩毎晩やらせろやらせろってもっとうるさくなっちゃってぇ」
「ふーん」
「で、ようやく一昨日クリアしたのぉ」
「ク、クリア? 一体なんの話をしているの?」
「え、ファイナルファンタジーVIII」
つまらない小噺になっちゃいました。 品位が下がりそうでいてそうではありませんでしたね。 期待して肩すかしを食らった方、ごめんなさい。 やっぱり、私にも一応立場と言うモノがありますから、 シモジモのお話は避けなければならないのです。 あと、何故か女性がコギャル風の口調ですが、あんまり気にしないように。

そこで、取り出したりますは「G線上のアリア」の入っているCD。 「これを寝る前に聴いてみると、良く寝れるよ」なんて、 やさしい言葉をかけてあげれば、 「この人、ゲーム狂いのイマカレなんかより素敵」という展開だって 不可能ではありません(いや、不可能ですって)。

(*1)続けましょう
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今日の推薦CD:
J.S.Bach, "Ouverturen Suiten"
Musica Antiqua Koeln, Reinhardt Goebel
Deutsche Grammophon Archiv, 415 671-2, 1982

アリアだけ聴いていては勿体ないでしょう。この「管弦楽組曲」には、 他にも珠玉の曲が入っています。盛大でありながらシックな第1組曲、 フルートが大活躍の第2組曲、トランペットも交えて華々しい第3組曲、 同じく華々しい第4組曲と充実しています。

では、今回のCDですが、演奏はライハルト・ゲーベル率いるMAKによるものです。 この団体の「アリア」は非常に特殊です。この曲には繰り返しがありますが、 繰り返した後は(いわゆる2回目)非常に豊かで自由な装飾を施してあり、 飽きさせません。しかも、この曲だけ1人1パートで演奏しているようで、 非常に繊細で彫りの深い演奏に仕上っています。これだけでも一聴の価値はあります。

序曲は付点を2重付点にしない地味めな演奏のように聴こえますが、 解説を読むと、バッハの楽譜を記譜通りに弾くというポリシーでやっているようです。 ここら辺の議論は、 フレデリック・ノイマン 著の「正しい装飾音奏法」にも面白い記述があります。

また偽作と言われている管弦楽組曲5番が収録されています。 偽作と言われているが故に、この曲は滅多に聴くことはできません。

他にも古楽器による癖の少ない優れた演奏は存在します。 しかし、ちょっと変わりモノの演奏でも構わないのなら是非お勧めしたいです。


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Copyright (C) 1999 Yusuke Hiwasaki