1999.04.22 「古楽でモテモテになろう! Part2 - ヴィオール曲集 - 」

先日の「古楽でモテモテになろう! Part1」は、 結構反響がありました。その中から、お便りを紹介しましょう。

こんにちは、いつも楽しく読ませて頂いております。 先日の「古楽でモテモテになろう!」ですが、確かに効果がありました!

実は私、最近、毛髪が、まるで真冬の海水浴場の様に寂しかったのです。 祖父も父も、それは見事なKettle Head(どうもヤカン頭と言いたいらしい)で、 「家系なのだからしかたがない」と半分諦めていました。 枕に落ちた毛を眺めながら、ただ涙する毎日を送っていたのです。 そんな頭ですから、 意中の女性にも「まぶしいっ、近寄らないで」と言われ、フラれ続けました。

そんなときに、出会ったのがEnsemble Laputanのページでした。 雑記帖をなんの気なしに読んでみたのですが、 バッハの無伴奏チェロでモテモテになると読んで、 自分でも興味が湧いて来たのでサックスの清水さんのCDを買ってみました。

驚いたことに、翌日の朝、起きて鏡を見てみると、 寂しかった僕の額に産毛が生えていたのです。 しばらくすると、みるみるうちに生えて来て、 今では帽子をかぶって隠したりする必要もなくなりました。

昨日は、恥ずかしくて告白できなかった女の子に、ようやく自分の心を打ち明け、 24年間の彼女いない歴ともおさらばすることができました。 本当に感謝しています!

うーむ。これは、おかしいですね。モテモテフサフサは、 違うモンだと思ってたんですが。モテているのも一人だけみたいですし。 どうもバッハの無伴奏チェロの効能が違ったようです。

って、信じちゃいけません。 いまのは真っ赤です。 この文章、私が創造したもんです。全然反響なぞありやしません。 反響がなさ過ぎて、まるで真夏のスキー場のように寂しいです。 本当にこの文章、誰か読んでくれているのでしょうか? やっぱり文章がカタいのかしら? ……… でもしかたありません。一度は乗りかかった舟です。 このこっ恥ずかしいタイトルと天性に全く恵まれない文才でどこまで行けるか、 ちょっと頑張ってみたいと思います(*1)。 もちろん、割れるような反響はいつまでもお待ちしております。

ということで、いよいよ本題。

前回は、 結果的に男性向けのものとなってしまいましたが、 女性のケースを考えてみましょう。 私なんかは、結構明るい人がタイプだったりしますが (ん、誰もそんなこと訊いていない?)、憂いのある、 おしとやかな人がタイプな人もいらっしゃると思います。 そこで、薄幸そうな顔をしたそこのあなた! 憂いのある、おしとやかな人を演じる小道具として、古楽は最適なんです。 その極意をお教えしましょう。

バロックの当時、もっとも音楽が栄えた場所としてフランスとイタリアがありますが、 ヴィヴァルディやアルビノーニ、コレルリなどに代表されるイタリアバロックは 良く聴く機会があっても、フランスバロックはそれほどありません。 で、そのフランスバロック音楽の代表的な作曲家として、 リュリやクープランが挙げられますが、 ルイ14世の宮廷に仕えたマラン・マレ(*2)という、 有名なヴィオラ・ダ・ガンバ(*3)奏者兼作曲家がいます。

この人は演奏家だけあって、ガンバのための曲を多く残しています。 「ヴィオール曲集」は5つもあり、技術的にも盛り沢山なものになっています。 その中でも、トンボー(*4)は情緒溢れる、 まさに珠玉の曲です。 機会を作って、以下の手順を意中の人の前で試してみましょう。

  1. 音楽をかけます。
  2. そのもの悲しい音楽のなかでちょっとうつむいてみます。
  3. そっとため息をついてみたりします。
  4. そして涙をほろりと流します(事前に目薬で仕込んでおくのも可)。
これで、その意中の人はあなたをほっておくことはできなくなります。 そこで、かならずや以下のような会話になるでしょう。
「どうしたんだい?」
「…」
「何かあったの?」
「いいえ、でも、この音楽があまりにも、もの悲しくて美しいから…」
「(なんて感受性の豊かな人だ! か、かわいすぎる!!!!)」
となるでしょう。しかし、あんまり度が過ぎると、目にゴミが入ったとか、 情緒不安定とか、ただの古楽ヲタクなどと間違えられてしまうので要注意です。

(*1)頑張ってみたい
…ですが、「ヤメロ」などの苦情は、どしどしどうぞ。
(*2)マラン・マレ
マラン・マレは、以前「カウンタ」の回で 推薦CDの作曲家としてチラと紹介したことがあります。 ルイ14世の宮廷音楽家としても有名でした。 一昔前にジャラール・ドパルデューが主演した「巡り会う朝」という映画の 主人公として登場します。この映画のサントラはお勧めです。
(*3)ヴィオラ・ダ・ガンバ
現在では演奏される機会が少ない弦楽器にヴィオール族のものがあります。 バロック時代にはヴァイオリン族のものと、 人気を二分していた程演奏されていましたが、 時代の移り変わりとともに廃れて行きました。 「ヴィオラ・ダ・ガンバ」は訳すると、「足のヴィオール」。 要はチェロの様に足で挟んで演奏する楽器なのです。
(*4)トンボー
長渕剛が主演したテレビドラマのことじゃなくて(それは「とんぼ」)、 追悼の意味をもつ曲に名付けられます。

今日の推薦CD:
M.Marais: "Pieces de Violon"
J.Saval (gamb), A.Hopkins (lute), T.Koopman (cemb)

[詳細は後日掲載予定です]


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