1999.01.20「過激な古楽演奏」

皆さんはどれぐらい過激な演奏をご存知でしょうか。 マーラーのように詳細に楽譜に書き込んである音楽もあれば、 「古楽」というものは、スラーさえも省略して書いてある(と言うよりは、 スラーの表現がなかった)ので、 自分なりの解釈が比較的自由にできる音楽だと思います。 それを逆手にとって、過激な解釈に基づく演奏が多出しています。

例えば、生まれて始めて過激でびっくりコイたのが、 Musica Antiqua Koelnの「ブランデンブルグ協奏曲」。 高校生だった私は異常とも思えるぐらいの超特急なテンポと、 ガツンと来るアクセントに興奮しました。これを聞いてから、 しばらくはほとんど全ての演奏が生ぬるくてたまりませんでした。

アーノンクールとConcentus Musicus Viennaの「四季」にもびっくりしました。 拒否反応がでる程のショックでした。 今改めて聴いて見ると、60年代(*1)にこんな演奏をしていたのかと、 2度びっくりしてしまいます。ちなみに、この斬新なアイディアは、 ほとんどそのままIl Giardino Armonicoの演奏に継承されている気がします。

最近では、このIl Giardino Armonico(伊)も過激。ヴィヴァルディの「海の嵐」を、 バロックオーボエ奏者E君の家で聴かせてもらい、 「こんなのもあるんだね」と言いつつリコーダー奏者かつリーダーであるAntoniniの 真似をしたりしました。 このアンサンブルは特に通奏低音が過激で、 リュートは弾きすぎで弦が楽器にばちばちとあたったり、アクセントは「ガツン」 どころか「ドカン」という感じです。

あとは先輩のリコーダー奏者Nさんから 「とにかく面白いから聴いてみろ」と教えてもらった、 Arcadiaという団体。Rec, Vn, Vg, Cembの4人のアンサンブルで、 とにかくリコーダーが過激と言うよりは。 CDの解説に書いてあるものを読むと、 当時のストリートオルガンの装飾を模倣しているとのことですが、 ターンやトリラーなどの装飾を原曲が分からなくなるくらい過剰につけています。 グループの他の演奏者はかなりマトモで非常に上手ですので、 その対比を楽しむのも一興かもしれません。

こういう風に面白い演奏は多いのですが、 これらの問題は「食傷気味になってしまう」ことでしょう。 最初は刺激的で面白いのですが、何回か聴いているうちに慣れて来たり、 他の曲を聴いてみると意外とワンパターンだったりして、 がっかりさせられることがあります。 そうならないようにバランスの取れた演奏が理想的だなぁ、 なんて考える今日この頃です。

(*1)60年代
大嘘ついていました。実は、1977年の録音だったようです。
(*2)リコーダー奏者Nさん
偶然HMVをフラフラしていたら遭遇。 プロフィールは凄い人ですが、 平日の昼間に彼は一体何をしていたんでしょう?

今日の推薦CD:
"Priest on the run"
Red Priest
upbeat classics, URCD141, 1998

題名は、 ポール・マッカートニーとウィングスの`Band on the run' というアルバムのパクリでしょうか。 団体名もヴィヴァルディのあだなである「赤毛の牧師」。 Rec, Vn, Vc (+ Vdg), Cembの4人編成による英国のアンサンブルですが、 初めて聞く団体名です。題名と団体名からは、バロック音楽のCDというよりは、 ヘヴィメタル系のCDと勘違いしてしまいそうです(それを狙っているのでしょうが)。

CastelloからTelemannまでバロック室内器楽曲を集めたアルバムです。 のっけのCastelloから超ハイテンションな演奏、 Gypsy風のTelemannのトリオソナタ、超高速Vivaldiの室内協奏曲などから、 OrtisやTelemannの渋いガンバのソロなど、感情の抑揚の激しい演奏です。 私としては、こういう演奏はちょっと食傷ぎみなのですが、 こういう団体もあるぞということで、イチオウ推薦盤としておきます。


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Copyright (C) 1999 Yusuke Hiwasaki